②ダルバートとは何か
タメルの『ムスタン・タカリチェロ』のダルバート、もっとも美味しいお店の一つ
さて本題のダルバートです。
先ほども述べたとおり、ダルバートとは「ダル=豆のスープと「バート」=炊いたお米を合わせた言葉で、それに副菜や場合によっては肉のおかずを乗せたワンプレート定食の事を指します。 炊いたお米が載っているので、ダルバートは「カナ(食事)」です。というか、ネパールでは食事=ダルバートの事を意味します。
逆に言えば基本的にダルバート以外は食事ではありません。ネパール人は普通午前・夜の1日2回、このダルバートを食べます。それがネパール人にとっての「食事」なのです。
なのでダルバートは「カナ」とも呼ばれます。「サダ(普通の)カナ」と言えば肉無しのダルバート。「マス(肉)カナ」と言えば肉ありのダルバートです。
※ちなみにダルバートは「タリ」という呼ばれ方もされます。その場合、炊いたお米以外に「ディロ」(発音としてはデドの方が近い)と呼ばれるそば・ヒエ・トウモロコシの粉などを練った、そばがきのようなものが乗ることもあります。ネパールの山間部では田んぼを作るのが難しいため、こうした雑穀が主食という場所があります。ディロが乗っている場合は例外として炊いたご飯がなくても「カナ」扱いになります。


③ダルバートの構成要素
ダルバートとは「ダル」(豆のスープ)+「バート」(炊いたごはん)の合成語だと言いましたが、ダルバートのプレートにはそれ以外にも乗っています。
【必須級構成要素 】
ダル
豆のスープは小さな器に入れて出されます。スープと言ってもそのまま飲むのではなく、それをお米の上にかけて混ぜて食べます。一口にダルと言っても、豆の種類や作り方は様々で、さらさらしたシンプルなダルもあれば、玉ねぎなどを入れてドロッとさせたものもあります。豆の種類によってダルの色も、黄色・オレンジ・緑・茶色など色とりどりで、日によって、またその家や店ごとに違った味が楽しめます。
バート
炊いたご飯の事です。ネパールで食べられるお米は基本的にインディカ米(長粒米、いわゆるタイ米)です。タイ米は美味しくないと刷り込まれてしまっている方もいらっしゃるかと思います。確かに少し独特の香りはありますが、まずいなんてとんでもない!ダルバートはインディカ米でなければ美味しくありません。
水分少なめのバート(お米)の上にダルをかけて混ぜるので、食べる時にはちょうど良い具合になります。ジャポニカ米(日本米)では水分が多くべちゃべちゃしてしまいます。ちなみにインディカ米でチャーハンを作ると何の工夫もせずにパラパラチャーハンになります。日本でももっと気軽に手に入るようになればいいのに・・・。
タルカリ
タルカリとは「野菜」のこと。野菜を使ったおかずもすべて「タルカリ」と呼ばれます。具体的なおかず名は「野菜の種類の名前」+コ(の)+タルカリです。カリフラワーの炒め物なら「カウリ・コ・タルカリ」茄子の炒め物なら「ベンタ・コ・タルカリ」と言います。
アチャール
インターネットなどでアチャールと調べると、ネパール風orインド風漬物とかピクルスと紹介されることも多いですが、実はネパールではとても幅の広い言葉です。
大根などの野菜を発酵させたいわゆる漬物風なものも「アチャール」と言いますが、トマトやゴマをペースト状に煮詰めたペースト状のものも「アチャール」ですし、野菜を角切りにしたものをマリネしたサラダ風ものも「アチャール」と呼ばれます。
多少酸味があるのが共通点かと思いますが、見た目は実に様々です。酢漬けと紹介されている場合もありますが、ネパールでは大抵酢は入れず、「アミロ」という果物から作った調味料を入れて酸味を付けたりします。
サラダ風のこちらもアチャール。これはこぴらが作りました!
【副構成要素】
サーグ
サーグとは青菜の事です。これを少量のマサラで、もしくは塩だけで炒めたものが添えられていることもあります。
マス
マスとは肉の事。ネパールでは毎食肉を食べるわけではありませんし、ベジタリアンも結構いるのですが、少し豪華な食事の時には肉が入ります。ダルバートの場合、鶏が一般的ですが、より豪華になるとヤギも食べられます。たいていの場合は汁と一緒に小さな器に入って出されます。インド料理店で“スパイシーチキンカレー”として提供されるものに、近いです。
豚肉は食べる民族と食べない民族がはっきり分かれるので、お店のメニューにはほとんどありません。ご家庭で豚を食べる場合は汁なしで出されることが多いです。また、マチャ(魚)のダルバートもあり、川魚のカレーが添えられます。
質問コーナー:ヤギ肉って美味しいの?
はい。美味しいです!日本では食べる習慣がないので、少し抵抗があるかもしれません。でも、ネパールでは結婚式でも、親族が集まる時でも、一番のご馳走としてヤギ肉が振る舞われます。
お肉には少しのクセと弾力はありますが、ヤギカレーのグレービー(お汁)も絶品。牛肉のシチューのようなコクがあります。ぜひお試しあれ!
こんなに可愛いやぎさんも、きっと食用…😢
生野菜
タルカリとは別に、輪切りや短冊切りにした生のきゅうり・大根・人参などが乗っている場合があります。その場合はたいていペースト状のアチャールがついていると思いますので、アチャールを付けながら食べてください。