今回、ネパールで最初にコーヒー農園を始められた『The Everest Coffee』のサンタ・バール・ラマさんに、お話を伺うことができました。
なぜネパールコーヒーのルーツは日本にあるのか、興味深かったお話をまとめてみたいと思います。
偶然『The Everest Coffee』を訪ねる
コーヒーの記事を書きたいと思いたち、ちょうどカトマンズを訪れたので、エベレストコーヒーさんを訪ねてみました。こちらは以前友人に教えてもらったお店ですが、コーヒーが美味しかったので、きっと色々と教えていただけるだろうと思ったからです。
「あのー、最近ネパールを紹介するサイトを始めたのですが、少しお話お聞きできますか?」と切り出してみた。
最初はマンジュさんという女性の方でしたが、すぐに責任者のサンタ・ラマさんが出てこられました。とても丁重に迎えて下さり、美味しいコーヒーをまず出して下さいました。
お話を伺ってびっくり!このサンタ・ラマさんこそが、ネパールで最初にコーヒー栽培に取り組んだ方だったのです。
サンタ・ラマさんが日本でコーヒーに出会った
サンタ・ラマさんは、もともとネパールでトレッキングの会社を営んでおられました(現在もコーヒー事業と共に続けておられます)。ご本人もトレッキング好きで、ラムジュン、アンナプルナなど、ネパールのほとんどのトレッキングコースは制覇されたとか。
そして、1980年代に七年ほど日本に滞在され、日本山岳会のメンバーでもあられます。
その日本滞在中にコーヒーを知り、ネパールの経済発展のために、ぜひコーヒーをネパールで作りたいと熱い思いを持ってネパールに戻られたそうです。はじめてコーヒー器具にふれたのは、鳥取県の米子市だったとか。
ネパールにコーヒーを広めるまで
1988年からネパールで、コーヒー農家の育成を始められました。
はじめはカブレという場所でコミュニティの形でスタートさせたとか。ネパールのコーヒーは山あいの高地で栽培するため、一箇所に大きな農園を作ることはできないそうです。 何軒もの農家の生産を合わせて出荷する形です。
「苗はどこから持ち込んだのですか?」と質問すると、
「ミャンマーからだよ。ひとりの僧侶が赤い可愛い実をつけた木を、コーヒーとは知らずに持ち込んだよ」
ほー、確かにネパールとミャンマーは陸続き。ミャンマールートで持ち込まれた苗が、コーヒー農園を始めたい農家に配られていったとか。
そして、この苗木配布や焙煎機によるコーヒーの製品化を助けたのは、NGO『日本ネパール 人づくり協力会』などの、日本の温かい有志の方々でした。最初の焙煎機は、日本の友人がネパールまで送ってくださったそうです。
その後、サンタ・ラマさんはネパールの色んな場所に農園を広げて行かれました。現在は下の地図のように各地に点在しています。
ネパール国王から表彰されたサンタ・ラマさん
サンタ・ラマさんの熱い思いから始まったネパールコーヒー。コーヒー生豆の輸出第一号は、日本の横浜だったとか。つぎに、大阪、スイス、台湾、アメリカなどに輸出が広がっていきました。
その後、ラマさんに続き、ネパールでコーヒー事業をはじめる起業家も増えてきて、“ネパールコーヒー”の知名度もあがってゆきます。
ネパールでコーヒーという新たな名産品を産み出して、仕事がない山間部の人々の生活を豊かにしてきたと、サンタ・ラマさんはネパール国王からも表彰されたそうです。
『ザ・エベレスト・コーヒー』のオフィスには、その時の様子や、日本の皇太子殿下と謁見された時の写真も飾られていました。
突然取材させてほしいと訪れたこぴらを、親切に迎えて下さったサンタ・ラマさん。とても物腰の低い優しい方でしたが、実はとても偉大な方でした‼
ネパールコーヒーをナチュラル・コーヒーと呼ぶ理由
ネパールはコーヒー栽培の北限地。サンタ・ラマさんは、800m以上の山間部にコーヒー農園を作ることにこだわってこられました。
高地に作ることで霧が発生し、朝晩の寒暖差により、実の引き締まった美味しいコーヒーが作れるからです。
そして、有機肥料により土壌改良を行い、農薬を使用しないで栽培しています。
「有機肥料で行なうのは、ほんとはネパールの山の暮らしの人には化成肥料は高くて買えないからなんだ」 でもそれが本来の農業のあり方で、良い土をつくり、良い作物を産み出せるのですね!
「ではネパールコーヒーは、オーガニック・コーヒーなのですね?」とたずねると、
「オーガニック認定は受けていないので、ナチュラルコーヒーと呼んでいるんだ」
農薬を使用していないので、実質はオーガニックですが、次の理由で認定は取れないそうです。
◎オーガニック認定にはとても費用がかかり、国民1人あたりのGDPがわずか700ドルのネパールでは、高すぎて取得できない。
◎ネパールのコーヒー農園は小規模コミニティ型のため、ひとつの農場だけで作られているという、オーガニック認定基準を満たせない。
もう一度、言います。“ナチュラル・コーヒー”と謳っていますが、ほんとうに“オーガニックなコーヒー”ですよー。
本物のネパールコーヒーを生産したい
サンタ・ラマさん、話を続けられます。
「ぼくはね、ネパールのイラムで生産されている紅茶{※}が、良い茶葉はすべて外国に送られて、残った屑のような茶葉だけがネパールで消費されていることに胸を痛めているんだ。
ネパールにはチヤ(煮出したマサラミルクティー)文化があるでしょう?チヤにしないと飲めないような茶葉しかないからなんだよ。それをマサラ(スパイス)で風味をつけてるんだよ。
コーヒーはね、質の良いものをネパールの人に飲ませてあげたいんだ。
でもね、今ネパールにはインドの低地で作られたコーヒーが、“ネパール・オーガニックコーヒー”として、出回っている。これもとても残念。ネパールに来たときには、本物のネパールコーヒーを買ってほしい。」
確かに!こぴらも一度、あるお店でコーヒーを買って、美味しくなくてがっかりした覚えが…。美味しいネパールコーヒーをぜひ飲みたい!そして、飲んでほしい!
そして、“チヤ”のお話も個人的には衝撃的でした。屑のような茶葉をネパールの代表的な飲み物に作り変えた、ネパール人の知恵とたくましさが、すごいですね。
ネパールのイラム地区は、インドのダージリンと隣接しており、そこで収穫された紅茶は『ダージリン・ティー』として、海外に輸出されています。イラム紅茶についてはこちらの記事をご覧ください。
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元祖ネパールコーヒー『ザ・エベレスト・コーヒー』を買えるお店
ネパールのカトマンズ・タメル地区をぶらぶらすると、紅茶を扱っているお店のいくつかに『ザ・エベレスト・コーヒー』も置かれています。
でも、『ザ・エベレスト・コーヒー』さんのオフィスもタメル地区にあり、そこでは卸値でコーヒーを買うことができます。
「一見(いちげん)さんでも、売ってくれますか?」とお聞きすると、
「フンチャ、フンチャ(いいよ、いいよ)。ノープロブレム(問題ないよ)」というお返事でした。
皆さんもタメルに行かれた時には、『ザ・エベレスト・コーヒー』さんのオフィスに、ぜひお立ち寄り下さいね。 優しいディディ(お姉さん)たちがお迎えしてくれますよ。
タメルの『The Everest Coffee』 はこちら
【店舗情報】『The Everest Coffee』 営業時間10:00-17:00 ,定休日 土曜日
ローストコーヒー 100㌘ Rs.250 生豆も手に入ります
日本で『ザ・エベレスト・コーヒー』を買えるのはこちら
日本では一般の店舗ではネパールコーヒーはあまり売られていませんが、ネットショップで買うことができます。間違いのない2つのお店をご紹介します。
リンク珈琲
冒頭でご紹介した池島さんの指導の下に作られたコーヒーを買うことができます。世界で0.01%しか生産されていない完熟豆で作られたコーヒーを、比較的安価で楽しめます。先ほどの口コミもこちらのコーヒーのものです。
ラトナコーヒー
ポカラの店舗から空輸で発送されています。こちらも希少な完熟豆から作られています。この記事で使用している写真は、ポカラのラトナコーヒーさんで撮影したものです。yahooショッピングではまだ口コミがありませんが、地元の人気店のコーヒーなので、一度試していただきたいです。
タメル地区で『ザ・エベレスト・コーヒー』を飲めるお店
タメル地区で『ザ・エベレスト・コーヒー』が飲めるのは、旅行者に大人気の『PUMPERNICKEL BAKERY(パンパルニケル・ベーカリー)』さんです。
コーヒーはRs.135です。美味しいキッシュやパン、ケーキなども食べられます。タメル地区に行かれる時は、ぜひお立ち寄り下さいね。
まとめ
ネパールコーヒーのルーツを知りたいと偶然訪れたお店が、まさにネパールコーヒーの歴史を作られた『ザ・エベレスト・コーヒー』さんでした。
そして、ネパールコーヒーのルーツが日本にあったことも、こぴらは全く知りませんでした。また、ネパールの地形が、美味しいコーヒーを産み出すのにぴったりだったなんて!ネパールコーヒーに、とてもロマンを感じた一日でした。
突然の取材に応じて下さった、サンタ・ラマさんとスタッフの皆さん、本当にありがとうございました‼
❁Thank you so much, Santa Lama jii ,staff Manju didi, ra Muna didi who kindly taught me, although you were busy!
ネパールコーヒーの味や特徴についてはこちらの記事をご覧ください
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