【なぜ増えている?ネパール人労働者】 ネパールの主要産業は`出稼ぎ′の悲痛な事情

日本で最近急増している外国人労働者。中でもネパールは特に日本政府が受け入れている国の一つです。

現在、約15万6,000人のネパール人が住んでいます。※2024年1月11日 日本経済新聞 出典

改正出入国管理法とは外国人労働者受け入れの拡大に向け、2018年12月に成立した。政府は5年間で最大約34万人の受け入れを見込む。新たな在留資格を設け、介護や外食など14分野で就労を認める。「特定技能1号」は一定程度の技能と日常会話レベルの日本語能力が、「2号」では熟練した技能が必要となる。

(2019-03-06 朝日新聞 朝刊 静岡・1地方より)

 

彼らはなぜ日本で労働しないといけないんでしょうか?

ネパールで3年暮らした私たちは、色んな家庭の事情を見聞きしたことからその理由が見えてきました。

今日はネパールのお仕事事情について少しご紹介します。ネパールの主要産業が出稼ぎとなってしまっている理由についても、考察しています。日本とまるで様子が違うことにびっくりされることでしょう…。

 

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出稼ぎに頼らざるを得ないネパールの労働事情 

ネパールの主要産業は農業

ネパールで暮らし始めて驚いたことのひとつは、一家の大黒柱や若者が外国で仕事をしている家庭が多いことでした。

ネパールでは農業人口が一番多く、これといった産業がありません。

ネパールは陸の孤島で、他のアジアの国に比べて、海外資本が入って来にくい地形です。

つまり、ネパールで何か作ったとしても、海路を使って輸出するにはインドの港を通さなければならず、インドの港にたどり着くには何十時間もかかります。また、インドを介することで関税も2倍かかります。

そんなわけで、外国企業がネパールにわざわざ産業を持ち込むメリットもないため、〝発展不能国〟という不名誉なレッテルを張られていますし、それがネパールを取り巻く厳しい現実でもあります。

 

色んな人と話した感触では、2軒に1軒は家族が外国に出稼ぎに行き、離れ離れの生活を送らざるをえないようです。 

友人たちにご主人はどこに住んでいるのか尋ねると、マレーシア、ドバイ、インド、オーストラリア、日本、韓国など。加えてアフガニスタンやイラクという名前を聞いたときは、にわかに信じるのが難しかったです。
在日ネパール大使館のホームページには、こんなデータがありました。 
2016 年までの主な出稼ぎ先

1.マレーシア

2.カタール
3. サウジアラビア
4. UAE
5. クゥエート
海外への出稼ぎ労働者数

1993年  3,605

2001年  104,736 
2010年  354,716 
2016年  418,713 
 2001年から海外への出稼ぎ労働者が格段に増えはじめ、2016年までの15年で4倍のネパール人が海外に流出しているのがわかります。最近は日本政府もより多くの外国人労働者を受け入れる方針ですが、その中にはネパール労働者も含まれています。
また、ネパールは昔イギリスに攻められた時に、ネパールを守った『グルカ兵』の存在があります。イギリスはこの『グルカ兵』に一目置き、今でもイギリスの傭兵として雇っています。かつては地球の反対側のアルゼンチンのフォークランド紛争にも帯同させたほど。そんな『グルカ兵』の功績のためか、マレーシアや中東ではネパール人はセキュリティの仕事を任されているそうです。

 

 

リスクの高いインディアン・アーミー

“インディアン・アーミー”イメージ図

また、ネパール人でインドで働く人も割合も多いのですが、その多くはインディアン・アーミーです。

先日、ローカルバスで乗り合わせたご家族は、ご夫婦とも22,3才くらい。小さな赤ちゃんがいて仲睦まじい様子でした。「どちらに行かれますか?」と聞くと、ご主人はインドのカシミールに行く、これからインドの国境まで奥さんが赤ちゃんを連れて見送りに行くとか。

話を続けると、ご主人はインディアン・アーミーで任地はパキスタンとの国境、シリアのテロリストが活動している地域とか。

 

インド カシミール地方

 

「危険なところじゃないですか」と言うと、
「そうですよ。明日、生きているかも分からない。ネパールは政府が若者に仕事を作ってくれないから、外国に行くしかないんだよ」と。

愛らしい奥さんと赤ちゃんとは、一年に2,3ヵ月お祭りの時期だけネパールに戻ってきて過ごすことができるとか。

 

思わず「そんな危険な仕事をしてひと月にいくらもらえるんですか?」と聞いてみた。
すると「1ヶ月7,8万ルピー、15年任期を終えたら200万ルピーもらえるけど」と。

現在、1ルピーは0.95円ほど。充分とも言えない金額で命がけの仕事をしていることに、こぴらはとても切なくなりました。でもネパールの女性は、そうした家族の事情をどっしり受け止めているようで、奥さんは終始笑顔でした。

他にも友人でインディアン・アーミーの任期を終えて、現在はネパールに住んでいる友人もいましたが、ネパール人は主に国境警備の危険な場所に行かされるそうです。私たちの友人は何とか無事に任期を終えましたが、いつも大きな銃声を聞いて仕事をしてきたため、40代半ですが耳が聞こえにくい障害が残っています。まさに体を張って仕事をしてこられたのです。

 

No.1の出稼ぎ先 マレーシアの現実

大都会 マレーシア・クアラルンプール
また少し前に私たちは、マレーシアに一ヶ月ほど滞在したことがありました。
マレーシアはどこへ行ってもネパール人がセキュリティの仕事に就いており、英語があまり話せない私たちは分からないことは彼らに聞けてとても助かりました。
ネパール語で話しかけると、日本人がマレーシアでネパール語で話しかけてきた!と笑顔で話が始まります。

でも、話してみると彼らの仕事も過酷でした。

セキュリティの仕事は、デイ勤務とナイト勤務の12時間勤務、2交代制

日勤と夜勤の切り替えの日には24時間連続勤務。ほとんどの人は年に1日も休みがなく、5年勤めてようやく契約が終わるのだとか。中には17時間勤務休みなしなんて人にも会いました。

 

住居環境も良くなく、何十台ものベッドの並ぶ部屋で、日勤・夜勤混じって共同生活なんて部屋も普通です。マレーシアに住む友人が言うには、マレーシアに住むネパリの暮らしは人の暮らしではないと。

5年も休みなしに働き続けると、身体も精神もボロボロになりそうです…。

実際に、朝起きたら同室に住む同僚が過労死していたという話も聞きました。しかもマレーシアでのネパリの平均月給は4万円ほどとか。日本でもブラック企業が問題になっていますが、世界中人々の暮らしは厳しいですね…。
 

一方、欧米や日本でそれなりの額を稼いできた人は、ネパールではお金持ちです。10年~15年外国で働いたお金で大きな家を建てて、一階は貸し部屋にして家賃収入を得て、土地転がしをして、その後の暮らしを立てています。

とはいえ出稼ぎに家族を送り出せるのは、比較的裕福な家庭。ネパールでも貧富の差は大きいです。いつかこんな状況が良くなる世の中が来てほしいものです。 

 

修理などをして細々と生計を立てるご主人

 

ネパールの市場で野菜を売る人々

風刺ポエムご紹介

पाकिस्तानमा कप जित्ने प्रधानमन्त्री बन्ने, 
भारतमा कप धुने प्रधानमन्त्री बन्ने, 
नेपालमा चाहीं गफ दिने प्रधानमन्त्री बन्ने !😂😂 
パキスタンは優勝カップを獲得せよと大臣が言う 
インドは優勝カップを洗えと大臣が言う 
ネパールといえば、ムダ話(ガフ)をせよと大臣が言う…

 

仕事がないからムダ話でもしていなさい?ネパールの日常を皮肉ったポエムです。 
※ネパール語ではカップとガフ(無駄話・世間話)という語ががかかっていて、ちょっとしたシャレになっています 

まとめ

現在、ネパールの海外送金の対GDP比率は32.3%。南アジアの中でも突出していて、出稼ぎに頼らざるをえない経済構造になっているようです。
日本でも、他の国でも、出稼ぎをしているネパリたちは真剣そのものです。限られた期間で稼ぐ目標に向かって、とても誠実に働いています。これから人手不足が懸念される日本でも、頼もしい労働力となってくれることでしょう。
少々重い話になってしまいましたが、今日はネパールのお仕事事情をお伝えさせていただきました。 

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