ネパール料理基礎講座① ダルバート ~その構成と食べ方~【写真図解付き】

こんにちは。サントスです。

今回はネパール料理基礎講座を開講したいと思います。 この講座はネパール料理の基本であるダルバートとは何か、どのように食べるかについて理解を深めていただく目的で開講いたします。

①ネパールでの「食事」の定義

奥さん
今日の昼ごはん何食べた?
ご主人
ラーメン
「三度の食事」という言葉がある通り、日本ではたいてい朝・昼・晩、1日3度食べる食事の事を「ごはん」と言いますよね。 でもこれを文字にすると、少し違和感を覚えるかもしれません。「ごはん」というと炊いたお米の事も意味するはずでは? 確かに日本でも昔はご飯=お米の事だったと思います。
 しかし今は、朝にパンやシリアルを食べても、昼にパスタやそばを食べても、夜に鍋+〆でうどんやラーメンを食べても、全てひっくるめて「ごはん」と呼ぶことにあまり違和感はないはずです。
 しかし、ここネパールでは「食事」の定義はしっかり決まっています。 ネパール語で「食事」の事は「カナ」と言います。そしてネパールで「食事=カナ」というのは、基本的に炊いたお米+豆のスープ+おかず」のワンプレート定食の事を意味します。ネパールでは一日2回「カナ」を食べるのが普通です。
hotel dhanfe
バイラワ・ダーンフェのダルバート
 逆に炊いたお米の乗っていないおかずだけではどれほどボリュームがあっても「食事」とされません。 それは「カナ」ではなく「カジャ」と呼ばれます。よくカジャの事をおやつ・・・と表現されているのを見るのですが、どちらかというと2回の食事の間の「軽食」と考えるのがしっくりくると思います。
 ネパール人の友達に「カジャを食べに来て」と呼ばれて、おやつ感覚で出かけて行くと、炊いたコメがないだけでがっつりとした肉のおかずとチウラ(干した米)やブジャ(はぜた米)が出てきてビックリすることがあります。
 とはいえ「カジャだよ」と言われおやつみたいなものを食べさせてくれることもあるので「カジャ」の定義は幅広いです。
 ちなみにネパール料理には「モモ」いう餃子の親戚や、チャウミンという焼きそばの親戚もありますが、これらは皆「カジャ」の種類です。

 

②ダルバートとは何か

Dal bhat in nepal
タメルの『ムスタン・タカリチェロ』のダルバート、もっとも美味しいお店の一つ

さて本題のダルバートです。

 先ほども述べたとおり、ダルバートとは「ダル=豆のスープと「バート」=炊いたお米を合わせた言葉で、それに副菜や場合によっては肉のおかずを乗せたワンプレート定食の事を指します。 炊いたお米が載っているので、ダルバートは「カナ(食事)」です。というか、ネパールでは食事=ダルバートの事を意味します。
 逆に言えば基本的にダルバート以外は食事ではありません。ネパール人は普通午前・夜の1日2回、このダルバートを食べます。それがネパール人にとっての「食事」なのです。
 なのでダルバートは「カナ」とも呼ばれます。「サダ(普通の)カナ」と言えば肉無しのダルバート。「マス(肉)カナ」と言えば肉ありのダルバートです。

 ※ちなみにダルバートは「タリ」という呼ばれ方もされます。その場合、炊いたお米以外に「ディロ」(発音としてはデドの方が近い)と呼ばれるそば・ヒエ・トウモロコシの粉などを練った、そばがきのようなものが乗ることもあります。ネパールの山間部では田んぼを作るのが難しいため、こうした雑穀が主食という場所があります。ディロが乗っている場合は例外として炊いたご飯がなくても「カナ」扱いになります。

 

③ダルバートの構成要素

ダルバートとは「ダル」(豆のスープ)+「バート」(炊いたごはん)の合成語だと言いましたが、ダルバートのプレートにはそれ以外にも乗っています。

【必須級構成要素 】

 ダル 
 豆のスープは小さな器に入れて出されます。スープと言ってもそのまま飲むのではなく、それをお米の上にかけて混ぜて食べます。一口にダルと言っても、豆の種類や作り方は様々で、さらさらしたシンプルなダルもあれば、玉ねぎなどを入れてドロッとさせたものもあります。豆の種類によってダルの色も、黄色・オレンジ・緑・茶色など色とりどりで、日によって、またその家や店ごとに違った味が楽しめます。
 バート 
 炊いたご飯の事です。ネパールで食べられるお米は基本的にインディカ米(長粒米、いわゆるタイ米)です。タイ米は美味しくないと刷り込まれてしまっている方もいらっしゃるかと思います。確かに少し独特の香りはありますが、まずいなんてとんでもない!ダルバートはインディカ米でなければ美味しくありません。
 水分少なめのバート(お米)の上にダルをかけて混ぜるので、食べる時にはちょうど良い具合になります。ジャポニカ米(日本米)では水分が多くべちゃべちゃしてしまいます。ちなみにインディカ米でチャーハンを作ると何の工夫もせずにパラパラチャーハンになります。日本でももっと気軽に手に入るようになればいいのに・・・。
 タルカリ 
 タルカリとは「野菜」のこと野菜を使ったおかずもすべて「タルカリ」と呼ばれます。具体的なおかず名は「野菜の種類の名前」+コ(の)+タルカリです。カリフラワーの炒め物なら「カウリ・コ・タルカリ」茄子の炒め物なら「ベンタ・コ・タルカリ」と言います。
アチャール
 インターネットなどでアチャールと調べると、ネパール風orインド風漬物とかピクルスと紹介されることも多いですが、実はネパールではとても幅の広い言葉です。
 大根などの野菜を発酵させたいわゆる漬物風なものも「アチャール」と言いますが、トマトやゴマをペースト状に煮詰めたペースト状のものも「アチャール」ですし、野菜を角切りにしたものをマリネしたサラダ風ものも「アチャール」と呼ばれます。

 多少酸味があるのが共通点かと思いますが、見た目は実に様々です。酢漬けと紹介されている場合もありますが、ネパールでは大抵酢は入れず、「アミロ」という果物から作った調味料を入れて酸味を付けたりします。

 

nepal food
サラダ風のこちらもアチャール。これはこぴらが作りました!
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【副構成要素】

サーグ
 サーグとは青菜の事です。これを少量のマサラで、もしくは塩だけで炒めたものが添えられていることもあります。
マス
 マスとはの事。ネパールでは毎食肉を食べるわけではありませんし、ベジタリアンも結構いるのですが、少し豪華な食事の時には肉が入ります。ダルバートの場合、が一般的ですが、より豪華になるとヤギも食べられます。たいていの場合は汁と一緒に小さな器に入って出されます。インド料理店で“スパイシーチキンカレー”として提供されるものに、近いです。
肉は食べる民族と食べない民族がはっきり分かれるので、お店のメニューにはほとんどありません。ご家庭で豚を食べる場合は汁なしで出されることが多いです。また、マチャ()のダルバートもあり、川魚のカレーが添えられます。

 

 質問コーナー:ヤギ肉って美味しいの?

はい。美味しいです!日本では食べる習慣がないので、少し抵抗があるかもしれません。でも、ネパールでは結婚式でも、親族が集まる時でも、一番のご馳走としてヤギ肉が振る舞われます。

お肉には少しのクセと弾力はありますが、ヤギカレーのグレービー(お汁)も絶品。牛肉のシチューのようなコクがあります。ぜひお試しあれ!

こんなに可愛いやぎさんも、きっと食用…😢
生野菜
 タルカリとは別に、輪切りや短冊切りにした生のきゅうり・大根・人参などが乗っている場合があります。その場合はたいていペースト状のアチャールがついていると思いますので、アチャールを付けながら食べてください。

④ダルバートの食べ方

ダルバートの食べ方の基本は「かける」「混ぜる」「食べる」です。 それぞれやり方があると思うで、一例として基本的な食べ方を記述します。

①バート(米)の上にダル(豆スープ)を1/3量かける
②両者をしっかり混ぜ合わせる
mix
③食べる
④混ぜ合わされたバートに、タルカリやアチャールを乗せて、さらに混ぜる
⑤食べる
⑥ご飯の残った白い部分に、マス(肉)の汁をかける
⑦しっかり混ぜ合わせる
⑧食べる
⑨以下適当に生野菜などをつまみながら自由に食べる。アチャールで酸味や辛味を調整しても良い
 ダルバートのシステムで大切なのは「肉以外お代わり自由」という事です。
 (店によっては「ハーフ」とか「ベイビー」というお代わりなしだけどちょっと安い というメニューもあります。)
 お店の人がお代わりを注ぎに来るので、好きなものを足してもらってください。
add rice
 バートおかわり
add soup
 ダルおかわり
add vegetable
 野菜のおかず全種おかわり
after
 はい。最初に来たプレートより量が多くなりました。
 肉以外は何度でもお代わり自由。ただし肉汁(グレービー)は足してもらえることもあるので相談してください。
 細かく手順を書きましたが、「混ぜる」という基本を忘れなければあとは好きに食べてください。所詮は定食なので自由勝手に食べてOKです。
 ネパール人は手で食べる人も多いですが、スプーンで食べる人もいます。なのでどんな食堂でもスプーンを頼めば出してくれます。 もしあなたがまれにみるネパール人顔でスプーンが出されなかった場合は「チャムチャ ディノス」(スプーン下さい)と言ってください。

⑤ダルバートを手で食べる方法

スプーンで食べてもおいしいダルバートですが、手で食べるともっとおいしく食べられます。手で食べるともっとよく混ぜられるからなのか、手の感触が心地よいのか、本格的っぽい気分がそうさせるのか、試してみたい方は手で食べる方法もトライしてください。ちなみにサントスは場所によって手で食べます。こぴらはチャムチャ(スプーン)派です。

  • しっかり手を洗う
 カナを食べさせる食堂には大抵、手を洗う場所と石鹸が常備してありますので、まずは手を洗ってきてください 。食べ物を触るのは「右手」です。左手はトイレで用を足した時に使う不浄の手なので、特に左利きの皆さん、口にご飯を入れるのはは必ず「右手」という事はお忘れなく。なお、「ダル」や「マス」の器は左手で触っても問題ありません。
・ダルをかけてよく混ぜる
  • 口に運ぶ方法
 手で思いっきり混ぜ合わせた「ダル」と「バート」を、人差し指から小指を少しくぼませがその上に一口分載せます。 親指はご飯の手前に置き、手を口に近づけたときに親指でご飯を口の中に押し出します。 あとは適宜手で他のおかずをつまんで、ご飯と一緒に混ぜて完食してください。
Get in hand
  • 食べている間に右手はどうするの?
 食事中に小休止したり、友達としゃべったりするときには、テーブルに肘をつき、手をあの東京オリンピック招致の時の「お・も・て・な・し」のポーズで上に向けて下さい。(別にピンと立たせておく必要はないのですが)
Between meals
  • 食べ終わったら
 ネパール人の中には、食事のお皿をなめたかのようにきれいにする人がいます。よく見るとお皿をなめているわけではなく、皿に付いたご飯や汁を手にうつし、手をなめてきれい食べつくしています。高級レストランでやっている人はあまり見かけないかもしれませんが、家や気の置けない仲間同志で食べる時には、そんな風に最後までご飯をきれいに食べることも少なくありません。
Complete meal
ネパール人がきれいに食べた後のお皿はもっときれいです。
完食したらまた洗面所で手を洗いに行って終了です。ごちそうさま。

次回予告

本日の基礎ダルバート講座は以上となります。

次回は続・基礎ダルバート講座 バートの炊き方とダルの作り方でお会いしましょう。
それではまた、ごきげんよう。
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